預貯金・借金・債務の生前整理・手続きについて

資産整理は相続発生後の家族の負担を軽減するためにも、元気なうちに取り組んでおくべき重要なステップです。今回は、「預貯金・借金・債務」について、よくある疑問に答える形で、生前に何を準備すべきかを整理します。


家族と共有すべき資産情報とは?

急な死去によって遺族が困らないようにするためには、資産内容だけでなく、暗証番号やパスワードなどの重要情報まで、家族と共有しておく必要があります。

まず取りかかるべきは、自分が保有する資産の「見える化」です。これにより、家族は相続税が発生するか否かの判断材料を得ることができますし、無駄な手続きを避けることにもつながります。

資産を「遺す」ことに加えて、「使える状態で遺す」ことも同じくらい大切です。たとえば預貯金については、どの銀行にいくらあるか、通帳や届出印の場所、キャッシュカードの暗証番号に加え、ネットバンキングのログイン情報も伝えておく必要があります。

また、以下のような情報も合わせて家族に知らせておきましょう。

  • 金庫に現金や貴金属を保管している場合、その中身だけでなく、金庫の鍵の保管場所もセットで伝える
  • 生命保険証書や不動産の登記書類、ゴルフ会員権などの存在とその保管場所
  • ネット証券の利用状況とアクセス情報

生前整理の第一歩は、資産の洗い出しです。これを機に、使っていない口座やクレジットカードなどは整理しておくのもおすすめです。


預貯金だけで安心?共有すべき資産は多岐にわたる

「自分の資産といえば預貯金しかない」と考える人も多いかもしれませんが、相続の観点から見ると、預貯金だけでは不十分です。

相続対象となるのは、金銭的価値のあるものすべてです。以下のような資産も、見落とさず「見える化」しておくことが大切です。

◎現金・有価証券
現金、預貯金、有価証券、貸付金、小切手など。

◎動産
自動車、オートバイ、骨董品、美術品、宝石、貴金属、家具・家電など。
※目安として、取得価格20万円以上または現在価値10万円以上のもの。

◎不動産
宅地、建物、農地、山林、店舗など。
権利には、所有権(マンションの場合は区分所有権)、借地権、借家権、地上権なども含まれます。

◎その他
ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権、著作権、特許権、商標権など。

◎みなし相続財産
死亡保険金、死亡退職金、死亡の3年前までに相続人へ贈与された財産など。
(※相続税法 第3章などに規定)

一方で、以下のような財産は相続税の課税対象ではないものの、家族への情報共有は必要です。

  • 年金受給権
  • 養育費の請求権
  • 仏壇や墓などの祭祀財産

また、忘れてはいけないのが「マイナスの財産」です。借入金やローンなどについても、次の項で詳しく説明します。


マイナスの資産も忘れずに共有を

借金や未払金、保証債務といった「マイナスの財産」も、相続の対象になります。これらを家族が知らないと、後で重大なトラブルにつながる可能性もあります。

具体的には以下のような項目があります。

  • 借入金(住宅ローン、消費者金融など)
  • 税金や社会保険料の未納分
  • 家賃の未払い
  • 公共料金(電気・水道・ガス)や通信費(携帯、インターネット)の未払金
  • クレジットカードの未払金
  • サブスクリプション契約(定額サービス)の継続状況と契約先

さらに、連帯保証人としての債務も、忘れてはならないポイントです。保証人となっていた場合、その債務も相続対象となるため、家族に必ず知らせておきましょう。

可能であれば、生前のうちに保証契約の解除や見直しを行い、家族にリスクを遺さないようにすることが理想です。


まとめ

資産整理というと、「何をどれだけ持っているか」だけに目が向きがちですが、実際には「どこに保管されているか」「誰がアクセスできるか」「家族が正しく理解できるか」といった点まで整えてこそ、意味のある生前整理になります。

プラスの財産も、マイナスの財産も、家族としっかり情報を共有し、トラブルのない相続を迎えるために、今できることから始めていきましょう。

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