預貯金・借金・債務の生前整理・手続きについて
資産整理は相続発生後の家族の負担を軽減するためにも、元気なうちに取り組んでおくべき重要なステップです。今回は、「預貯金・借金・債務」について、よくある疑問に答える形で、生前に何を準備すべきかを整理します。
自分が保有している資産の総額を把握する簡単な方法はありますか?
資産を整理する際、まず大切なのが「資産の全体像をつかむこと」です。
その第一歩として有効なのが、「資産目録(一覧表)」の作成です。資産目録とは、どんな資産をどれだけ保有しているかを一覧にしたものです。これがあることで、自分の経済的価値を客観的に把握できますし、相続人にとっても手続きの負担が大幅に軽減されます。
作成方法に決まった形式はありません。市販の書き込み式ノートやシート、自作のエクセルリストなどを使っても構いません。以下のような手順で進めていきましょう。
- 保有するすべての預貯金口座をリストアップする
- 使っていない休眠口座や古いクレジットカードを洗い出す
- 所有する不動産、車両、貴金属などの動産を記録する
- ネット証券や仮想通貨など、新しい資産も漏れなく記入する
作成した資産目録は、「一度作って終わり」ではなく、少なくとも年に1回は更新しましょう。特に投資資産や預貯金の残高などは変動があるため、定期的な見直しが大切です。
預貯金は銀行名や口座番号のほかにも、家族と共有すべき情報はありますか?
預貯金に関する情報共有では、「銀行名」や「口座番号」だけでは不十分です。
相続の際、家族が実際に手続きを行うためには、以下のような情報が必要になります。
- 通帳の保管場所
- 届出印(銀行印)の保管場所
- キャッシュカードの暗証番号
- インターネット口座のログインID・パスワード
- 口座の用途(年金の受取口座、公共料金の引き落とし口座など)
これらの情報が伝わっていないと、相続人が手続きを進める上で大きな障害となります。とくに、ネット専用口座やネット証券は「存在に気づいてもらえない」ことが多いため、確実に伝えておくことが重要です。
また、この機会に不要な口座を解約し、複数の口座を整理・集約しておくことも有効です。資産目録と連動させて管理すれば、自身の生前の資金管理にも役立ちますし、家族が迷うことも減ります。
暗証番号や印鑑の保管場所はまだ家族に知らせたくない。死後に知らせる方法は?
「今はまだすべての情報を家族に伝えるのは不安がある」という場合、信頼できる方法で情報を“死後に”伝える仕組みを整えておくことも可能です。
たとえば、以下のような方法があります。
信頼できる家族だけに情報を限定して伝える
まずは、配偶者や長男など、信頼のおける家族にだけ情報を共有する方法です。ただし、相続人間で「知らされている人」「知らされていない人」がいると、将来的にトラブルになる可能性もあります。
貸金庫の利用
銀行や信用金庫の「貸金庫」を利用し、通帳、印鑑、資産リスト、重要書類などを保管しておく方法です。鍵の保管場所や暗証番号だけを特定の家族に伝えておけば、他の相続人が勝手に中身を確認することはできません。
死後に開かれるメモの活用
自分の死後、確実に家族が目にする場所にメモを残すという方法も有効です。メモには以下のような情報を記載しておきます。
- パソコンやスマートフォンのパスワード
- 資産目録ファイルの保存場所とファイル名
- 保管先の場所(例:貸金庫、書斎の引き出し、愛読書の中など)
遺族が目にしやすい場所としては、定期入れ、手帳、財布、スマートフォンのケース、日記帳などが挙げられます。デジタルデータで管理する場合は、ファイル名を「資産一覧」や「相続情報」などにしておくとわかりやすくなります。
また、パソコンを使わない場合でも、紙に書いたリストと保管場所を明記し、目につきやすい場所に保管するだけでも十分です。
まとめ
生前整理においては、資産のリストアップだけでなく、その情報を誰に、どのように伝えるかも極めて重要なポイントです。
すべてを早い段階で家族に共有するのが理想ですが、心配な場合は「信頼できる家族に限定して伝える」「死後に伝える仕組みを整えておく」といった選択肢もあります。
資産整理は、自分の安心だけでなく、遺された家族の心と時間を守る行動です。今からできることを一つずつ、着実に進めていきましょう。