相続
OMOIAIの専任相談員がお客さまの相続に関するご要望をお伺いしたうえで、提携している税理士等専門家を紹介します。
士業の見分け方
相続に関わる専門家の中でも、士業と言われる専門家がいます。税理士、司法書士、行政書士、弁護士などです。相続においてどのような専門家・士業に相談したらよいか、ご説明します。
相続問題では、状況に応じてさまざまな専門家が関わることとなります。行政書士は、相続関連の書類作成(法務局提出書類の作成代行以外)、司法書士は、不動産の名義変更の申請など相続に関わる登記、弁護士は、相続紛争解決のための遺産分割協議、税理士は、相続税申告手続きなどが主な専門領域です。
ただ、相続関連書類の手続き等は弁護士・法律事務所や税理士でも行うこともできるので、相続紛争のみ、税務申告のみしか行えないということではありません(それぞれ職権領域があります)。
終活・相続の事情に合った士業・専門家に相談することが大切です。
このように、相続問題には複数の士業が関わっています。
各士業でできることをまとめているのでご確認下さい。
項目 | 弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | 税理士 |
---|---|---|---|---|
相続調査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
遺産分割協議書作成 | ○ | ○ | ○ | ○ |
代理人として交渉 | ○ | |||
遺産分割の調停 | ○ | |||
遺産分割の審判 | ○ | |||
相続登記 | ○ | ○ | ||
相続税申告 | ○ |
司法書士
司法書士は、「不動産の相続手続」における専門家です。
次の方は、司法書士に相続手続を依頼すればよいでしょう。
・不動産の名義変更を行いたい方(相続登記をしたい方)
・不動産のみならず預金、株式等の相続手続もまとめて依頼したい方
行政書士
行政書士は、権利義務に関する書類を作成することができる専門家です。また、他士業法に抵触しない範囲で、各役所に提出する書類を作成したり、各役所での手続を代理することができます。次の方は、行政書士に相続手続を依頼すればよいでしょう。
・遺産分割協議書のみを作成して欲しいと考えている方
・相続人の調査をして欲しいと考えている方
・自動車の相続手続(名義変更)をしたいと考えている方
※行政書士に依頼できるのは、あくまで部分的な相続手続であると考えるのがよいです。
税理士
税理士は、税申告の専門家です。税といえば、相続においても「相続税」や「準確定申告」などが問題になる場合があります。
次の方は、税理士に依頼すればよいでしょう。
・相続税申告を依頼したい方・準確定申告を依頼したい方
・税務署の手続以外は自分で行うことが可能な方
・相続税がいくらかかるのか、税金について相談したい方
税金のことは、必ず税理士に相談しましょう。
弁護士
弁護士は、裁判のプロです。また、紛争性のある事件を、裁判外の交渉で解決してくれることもあります。
次の場合は、弁護士に相続の相談をするとよいでしょう。
・相続人のなかで遺産分割に応じない人がいる場合
・相続人のなかで行方不明者がいる場合
・相続人のなかで、遺産を使い込んだ人がいると思われる場合
ご自身の相続に紛争性があると思われたら、迷わず弁護士に相談しましょう。
遺言書
遺言書は、被相続人(遺す方)が、生前において一定の書式に従って記載したご自身の財産処分等に関する意思を記載した書面のことを言います。遺言書の種類、書き方などをご紹介します。
遺言書は、被相続人が、相続財産について、誰に、どう分けるのか、の意思表示を記載するものです。遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言等があります。
自筆証書遺言は有効となるための要件があり満たしていないと無効になるため、慎重に記載する必要があります。
公証人役場において作成する公正証書遺言にて遺言を残す方法が確実です。どの遺言書であっても、その内容として各相続人の遺留分を侵害することはできません。
遺言書とは
終活において、ご自身の死後の希望を正式な形に残す「遺言書」がとても大切です。
遺言書とは、財産分与について明確に示すものです。
遺言書を書き、遺言者が自分の希望通り財産を分けられるだけでなく、相続トラブルの回避、死後の手続きが滞りなく進められるなど、残された人たちにとっても大いにメリットがあります。
遺言書の必要性
遺言書がないと、「法定相続人」だけが財産を受け取る対象となります。そして遺産分割協議を行って相続財産の分け方について話し合うことになります。
しかし協議の成立には相続人全員の合意が必要です。1人でも反対する人がいると成立しません。
また遺産の分け方が決まっても、財産の名義書換には相続人全員の印鑑証明などが必要になるなど、非常に手間がかかります。
残された人のこういった手間を軽減するためにも遺言書はとても有効なのです。
遺言書があった方が望ましいケース
①遺産分割に負担が大きい場合
(面倒な遺産分割協議の手続を省略できます。)
1)相続人に高齢者が多い
高齢者は遺産分割協議に対する負担が大きく、中々進まないこともあります。
また、認知症の方がいらっしゃったら、成年後見人の選任が必要となってきます。
2)相続人が多い
戸籍を追いかけて誰が相続人かを調査するのが難しくなってきます。
3)相続人が遠くに住んでいる
相続人と距離が離れていると協議をするのが難しくなります
②特定の相続人や相続人以外に財産をあげたい場合
(誰かを特別に扱うには遺言が必要)
1)内縁の妻に遺産をあげたい
2)面倒見てくれた長男に多めに遺産をあげたい
3)前夫(妻)との子にはあまり相続させたくない
③相続人がいない
(相続人がおらず、遺産を国庫に帰属させたくない方は遺言を作成する必要がある)
相続人がいない場合、遺産は国庫に帰属することになります。
それを望まない方は遺言書を書いてお世話になった人に遺贈したり、公益団体に寄付したりする対応が必要になります。
④おひとり様
相続人はいるが、疎遠となっており、自分の遺品の整理や相続手続きについて相続人に「迷惑をかけたくない」方は遺言書を作成しておけば問題ありません。
遺言書の種類
遺言書には主に3つの種類があります。特殊な状況において利用する特別の方式というものもありますが、通常用いるのは普通の方式
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
の3つの種類です。
自筆証書
自筆証書遺言とは、原則として全文・日付・氏名を自筆で記載する方式の遺言書です。
1)メリット
■気軽に作成できる
自筆証書遺言は、後述する公正証書遺言や秘密証書遺言のように、公証役場を利用するものではないので、気軽に作成できます。
■費用がかからない
公正証書遺言や秘密証書遺言は、公証役場を利用するものなので、手数料がかかります。
自筆証書遺言はこのような費用がかからない点はメリットといえます。
■誰にも知られずに遺言をすることができる
公正証書遺言も秘密証書遺言も、証人2名の立ち会いが必要となります。そのため、遺言をしたことを認識している人がいる状態になります。
自筆証書遺言は証人の立ち会いなど他人の関与なく作成することができるので、誰にも知られずに遺言をすることができます。
2)デメリット
■様式が厳しく無効となる可能性がもっとも高い
自筆証書遺言は、自分一人で作成することが可能であり、公証人や弁護士などの関与なしに作成することが可能です。
一方で、自筆証書遺言には厳しい法律的な要件があり、これを満たさない場合には遺言自体が無効とされてしまいます。
細かい規定を知らずに作成したために、遺言書が無効となってしまう可能性がもっとも高いといえます。
■検認手続きが必要である
自筆証書遺言は、相続開始後に「検認」という手続きが必要となります。 この手続きには2ヶ月くらいの期間がかかるため、手続に時間がかかります。
■誰にも発見されない可能性がある
自筆証書遺言のメリットである、誰にも知られずに遺言をすることができる、という点の裏返しなのですが、せっかく作成した遺言書を誰にも発見されない可能性があります。
■争いになりやすい
自筆証書遺言は、筆跡は本人のものなのか・本当に本人の意思で記載したのか・偽造されたものではないのか、などの理由で争いになりやすい傾向にあります。
公正証書遺言
公正証書の形で遺言書を作成する遺言の方式が公正証書遺言です。
1)メリット
■原本が確実に保管される
まず、原本が確実に保管されることになるので、遺言書の破棄や改ざんのおそれがありません。
■検認手続きが不要
公正証書遺言については検認手続きが不要です。
■自書ができない場合でも作成できる
自筆証書遺言は遺言書の自書(全文を筆記すること)が要件になりますので、例えば手が不自由となった場合には利用できません。
公正証書遺言は、公証人と意思疎通ができれば作成ができるので、自書ができない場合でも利用ができます。
■争いになりづらい
公正証書遺言は、作成をするのが法律のスペシャリストである公証人であり、弁護士などの専門家に依頼して作成することもあって、他の遺言書よりも信頼される傾向にあります。そのため、争いになりづらいといえます。
2)デメリット
■費用がかかる
公正証書遺言を作成するには費用がかかります。
公証役場に収める手数料の他、1)証人2名を用意する費用、2)弁護士などの専門家に依頼する費用がかかります。
■証人が必要である
公正証書遺言をするには証人2名の立ち会いが必要です。
知っている人に依頼をすれば遺言をしたことがわかってしまうことになりますし、専門家などの守秘義務のある人に依頼をするには1回につき1万円程度の費用がかかることになります。
■撤回をするのにもう一度遺言をする必要がある
遺言の内容を撤回する場合、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、遺言書を破棄すれば撤回できますが、公正証書遺言の場合は原本が公証役場にあるため、破棄ができません。
そのため、違う内容の遺言をする場合には、遺言を撤回する旨の遺言をしたり、抵触する内容の遺言をするなどの必要があります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公証役場で公証人の前で遺言書を封印する方法で行う遺言です。
1)メリット
■自書の必要はない
秘密証書遺言は、自筆証書遺言のように全文を筆記できなくてもかまいません。
ワープロで作成をしてプリントアウトしたものでも効力が発生します。
■遺言書の内容までは見られない
秘密証書遺言は公正証書遺言と同様証人2名を必要とします。
ただし、公正証書遺言は遺言書の内容を証人にも読み聞かせる必要がありますが、秘密証書遺言は手続きの中で遺言書の内容までは確認しません。
2)デメリット
■費用がかかる
公正証書遺言ほどではありませんが費用がかかります。
■証人2名が必要である
公正証書遺言と同じく、秘密証書遺言の場合にも2名の証人が必要です。
■遺言書は自分で保管する必要がある
遺言書については自分で保管するのが基本となるため、紛失・盗難の可能性があります。
■検認手続きが必要
秘密証書遺言書も検認の手続きが必要となります。
遺言書作成の注意点
①遺留分を侵害する遺言
法定相続人には「遺留分」という最低限相続できる権利が認められています。
遺言の内容が遺留分を侵害するものの場合、最低限の相続をできなかった相続人が最低限は相続させるよう遺留分侵害請求権を行使してくることがあります。
従って、遺言を作成する際はこの遺留分を侵害しない内容にしておく必要があります。
②全部の財産について分け方が書いていない
遺言で具体的にどの財産を誰に相続させると記載した場合、相続させる相手を指定していない財産が他にあると、その財産に対しては別途遺産分割協議が必要になります。
③付言事項
付言事項は法的効力はなく、法定遺言事項以外の内容を記載するものです。
具体的には「感謝の気持ち」や「遺言の動機」などを記載します。そのため相続トラブルを未然に防げるなどの効果もあります。
④遺言執行者の選任
遺言を作成する際はその遺言を執行する遺言執行者を決めておくとスムーズになります。
⑤専門家に相談をした方がいい
遺言を書いたのにもかかわらず、結果的に無効になったり、紛争になってしまうケ―スも多々あります。その多くは専門家に相談をしないで作成した自筆証書遺言です。
生前贈与
生前贈与は、被相続人(遺す方)が、生前に相続人となる方などにご自身の財産を分け与える行為を言います。生前贈与では、相続税と贈与税の仕組みを理解して行うことが必要です。
生前贈与とは、生前において相続人となる方等にお金や不動産などを分け与えることです。贈与税は10%~55%(基礎控除額を控除した後の課税価格に対する税率)と相当な税額になるため、できるだけ非課税枠を活用して将来の相続人に渡していくことが生前贈与の主な方法になります。
年110万円までの非課税枠を利用した暦年贈与、大きな非課税枠がある住宅資金、教育資金、結婚・子育て資金の支援、配偶者への自宅の贈与等の方法でも生前贈与を行うことができます。
生前贈与とは
生前贈与とは、被相続人が生前に贈与契約を行って相続人等に遺産を移転することをいいます。
生前に贈与をすることで、被相続人の遺産が減少し、これによって相続税の節税効果が見込まれるため、用いられることがあります。
生前贈与のメリット・デメリット
メリット
1)控除、特例を使った贈与税の節税
税金の節約につながる主な生前贈与の金額や方法は、次の通りです(基本的には受け取る側の金額)。
生前贈与種類 | 内容 |
---|---|
暦年贈与 | 1年間の贈与額が110万円まで課税されない |
相続時精算課税制度 | 累積2,500万円まで課税されない |
配偶者への贈与 | 夫婦間は2,000万円まで課税されない。 ※20年以上婚姻関係が続き、居住用不動産(現物)または居住用不動産を取得するための金銭であることが必要。 |
子や孫への教育資金 | 1,500万円まで課税されない(そのうち学校など以外に支払う金銭は500万円まで) ※2023年3月31日までの措置 |
結婚・子育て資金の一括贈与 | 受贈者1人につき1,000万円まで課税されない(そのうち結婚に際して支払う金銭は300万円まで) ※2023年3月31日までの措置 |
併用不可の制度や期間や対象年齢が限定されているものも多い為、事前に条件を確認し、適切な方法を選ぶことが必要です。
■暦年贈与
暦年課税は通常の贈与税の課税方式のことです。贈与のあった年の1月~12月までに受けた贈与に対して課税します。これには年間110万円の基礎控除があります。この基礎控除の範囲内で贈与をしている限り、贈与税の課税はありません。
■相続時精算課税制度
60歳以上の親・祖父母が亡くなるまでの間20歳以上の子・孫への贈与について、最大2,500万円まで贈与税の非課税となる制度です。
ただし、贈与した金銭は、相続時に相続税の対象となります。
また、この制度を利用すると暦年贈与を利用できないなどのデメリットがありますので注意が必要です 。
2)相続税を軽減できる
生前贈与により財産を減らすと、本人が死去した後の相続税が減らせます。残される人の税負担を軽減し、少しでも多くの財産を渡すには、生前贈与が役立ちます。
3)財産を贈る相手、時期を自由に選べる
生前贈与は財産を渡す相手を自ら自由に選択できます。
本人が亡くなった後の相続だと、法定相続人に財産が渡ることになります。遺言書を作成しても、遺留分を主張されると、故人の希望が叶わない可能性もでてきます。そのため、法律の規定とは異なる相手に(異なる割合で)に財産を渡したいときは、存命中に贈与をした方が希望を叶えやすくなります。
また、相続は本人が亡くなるまで発生しません。そのため財産を渡せる時期は不透明です。一方、生前贈与は、財産を贈るタイミングを自分で決められます。子や孫がたくさんの費用が必要となる人生の節目で財産を渡すことができる等、受け取る側のメリットも大きくなります。
4)遺産相続のトラブルを回避できる
故人の死去後は、相続を巡って争いが起きることがあります。しかし生きているうちに財産を渡してしまえば、本人の意志が尊重されることになりトラブルを避けやすくなります。
デメリット
1)税務署に認められないリスクがある
存命中の贈与によって税金を節約するには、金額や対象が定められた条件に合致しなければなりません。条件に合わない場合、税務署に控除や特例の適用を認められず、通常通りの贈与税や相続税を払う可能性もあります。(場合によっては追徴課税や延滞税が発生することも考えられます。) ※現金の手渡し、名義預金、タンス預金などは、税務署に認められないことがあるので、特に注意が必要です。
2)贈与税以外の税金が発生する場合がある
不動産を贈与するときは、手数料や贈与税以外の税金が発生します。
■登録免許税(登記簿謄本の記載内容を変えるときに発生する税金)
■不動産取得税(不動産を取得したときに発生する都道府県税)
他に、登記に関連した費用がかかることも念頭に入れる必要があります。
3)贈与から3年以内の死亡は相続税の対象となる
贈与をしてから、本人が亡くなるまでの期間が3年以内の場合、相続財産として扱われてしまい、相続税が発生することがあります。この規定は、生前贈与加算と呼ばれます。しかし生前贈与加算の対象とならない事項もあり、その点は確認が必要です。
・遺贈や相続の対象ではない人への生前贈与
・結婚・子育て資金の一括贈与に関する特例
・教育資金の一括贈与に関する特例
・住宅取得資金など贈与に関する特例
・夫婦の間でおこなう贈与の特例
4)遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)される場合がある
生前贈与に不満を持つ法定相続人から、本人の死亡後に、遺留分(最低限の相続権利)を主張される可能性もあります。特に、財産の所有者である被相続人が死去する1年以内に行われた贈与については、遺留分の主張をされるリスクが高いです。
生前贈与に向く場合、向かない場合
生前贈与する方がいい場合
・贈与する人がまだ若い場合
・多人数に財産を遺したい場合
・特定の人に限って財産を遺したい場合
・相手が必要な時に財産を渡したい場合
・相続トラブルが予想できる場合
・収益性のある不動産を贈与したい場合
・将来確実に価値が上がる財産を贈与したい場合
・贈与する人が事業を行なっている場合
相続の方がいい場合
・財産が少額で、相続税の基礎控除以内である場合
・生前贈与の控除、特例が適用される子どもや孫、配偶者がいない場合
生前贈与のポイント
①生前贈与の成立要件を満たす
生前贈与は、財産を贈る側と贈られる側の意思表示がおこなわれた段階で成立します。公正な贈与の証拠を残すために、贈与契約書を作成するのがおすすめです。贈与のたびに、契約書を作成するとよいでしょう。
②贈与する側が元気なうちに始める
財産を贈る側が年齢を重ね、適格な判断ができなってしまうと、生前贈与の成立要件である「財産を贈ることに対する意思の確認」が難しくなります。また、財産を贈ってから3年以内に本人が死去すると、相続税が課されることもあります。健康で、明確な意思表示ができるうちから贈与について検討することが重要です。
③毎年同じ金額を贈与しない
暦年贈与を選択すると、受取人の1年の贈与金額が110万円以下であれば基本的には非課税です。しかし、同じ金額を毎年同じ時期に贈り続けると、定期贈与(連年贈与)として扱われ、課税対象になることがあります。
定期贈与とならない為に、贈与のたびに契約書を作る、贈るタイミングや額を変える、といった対策が必要です。
※定額贈与:定められた金額を毎年贈ることが事前に決まっているもの。
④贈与される人が管理する口座に振り込む
財産を贈るとき大切なことは、銀行振り込みなどで証拠を残すことです。贈与の証拠を提示できないと、相続財産となり、相続税が発生する可能性があるからです。特に、現金をそのまま渡すのは、避けることをお勧めします。
また、名義預金は、祖父母や親の財産と扱われ、相続税の支払い義務が生じる場合があります。財産を受け取る人が作成・管理する口座に、お金を入れるのがおすすめです。
※名義預金:財産を贈る人(祖父母や親)が、財産を受け取る人(子や孫)の名義で開設した口座に入金すること
その他生前対策
生前贈与でご紹介した方法以外での税対策をご案内します。生命保険を活用した生前対策、小規模宅地の特例適用のための準備、養子縁組による生前対策などをご紹介します。
遺言書作成、生前贈与以外の相続対策としては、生命保険を活用した対策、小規模宅地等の特例の活用、養子縁組を行う方法などがあります。
生前贈与のための生命保険は、生前に保険料を一括支払いしておき、設定した保険期間に受取人に一定額を支給される仕組みの保険です。また、小規模宅地等の特例は、大きな相続税削減メリットがありますので、生前に条件を満たすような準備を進めておくことも生前対策となります。
養子縁組は、例えば孫と養子縁組をすると、相続関係上、孫が「子」となり、相続人として相続できるようにする方法です。被相続人が渡したい人に相続財産を渡すための生前対策と言えます。また、養子縁組により相続人が増えることによる基礎控除が増える効果もあります。
生命保険の非課税枠
親が亡くなった時に受け取る生命保険金(死亡保険金)の非課税枠を使うことで節税ができます。
①「500万円×法定相続人の数」が非課税
②遺産分割協議の対象にならない。(原則遺留分の対象にもならない)
小規模宅地等の特例
「小規模宅地等の特例」とは、相続した土地の相続税評価額を減額できる制度です。
条件(住宅として使っていた土地の場合)
①配偶者が取得すること
②被相続人と同居していた親族が取得し、相続税の申告期限まで引き続き居住し、所有すること。
⇒特例が適用されると、330㎡を限度に80%まで評価額を減額することができます。
※被相続人と同居していない親族でも一定の要件を満たせば適用されます。
※その他、事業用の宅地等(一般的な事業)、貸付事業用の宅地等(不動産貸付業)の土地の場合も一定の要件を満たせば、それぞれの条件で評価額を減額できます。
養子縁組
法定相続人を養子縁組で増やせば、基礎控除額や生命保険金・死亡退職金の非課税枠を上乗せして、節税することができます。
注意点
①孫養子の相続税は通常の2割増しとなる。(全体の節税効果の方が大きいことが多い)
②明らかな節税目的の養子縁組の場合、税務署に否認されることがある。
相続手続きの流れ
相続手続きには、多くの手続きがあり複雑です。どのような手続きがあるのか全体像を把握することにより、事前に準備を行うことができますので、ご紹介します。
相続と言われても、何から手を付けていいか分からない人も1多いと思います。実はこの相続手続きは細かくタイムスケジュールが決まっており、中には期限を過ぎてしまうと取り返しがつかなくなる手続きもあります。
終活を行う上で、相続手続きも重要になってきます。いざという時に慌てず対応できるよう、相続手続きの手順をご紹介します。
法定相続人を確認
まず法定相続人の範囲について確認が必要です。
故人の配偶者はどのような場合でも法定相続人になります。
ただし、正式な婚姻関係がある必要があります。
事実婚のパートナーや内縁の妻は法定相続人ではありません。
配偶者以外の法定相続人についてはそれぞれ相続順位が定められています。
相続順位とは法定相続人になることができる順番のことで、相続順位が高い人が法定相続人になります。
相続順位については下記のとおりです
第1順位 | 子供(直系卑属) |
---|---|
第2順位 | 親(直系尊属) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
法定相続分について
法定相続人が配偶者のみの場合、配偶者の法定相続分は遺産の全てです。
直系卑属がいる場合は配偶者と直系卑属が法定相続人になり、配偶者の法定相続分は遺産の2分の1です。
法定相続人が配偶者と直系尊属の場合は配偶者と直系尊属が法定相続人になり、配偶者の法定相続分は遺産の3分の2です。
法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になり、配偶者の法定相続分は遺産の4分の3です。
配偶者の法定相続分 | |
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法定相続人 | 配偶者の法定相続分 |
配偶者のみ | 遺産の全て |
配偶者と第1順位の法定相続人 | 遺産の2分の1 |
配偶者と第2順位の法定相続人 | 遺産の3分の2 |
配偶者と第3順位の法定相続人 | 遺産の4分の3 |
第1順位の法定相続分 | |
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配偶者と第1順位の法定相続人がいる場合 | 遺産の2分の1 ただし第1順位の相続人が複数いる場合は2分の1を均等に分割 |
第1順位の法定相続人のみの場合 | 遺産の全て ただし第1順位の相続人が複数いる場合は均等に分割 |
第2順位の法定相続分 | |
---|---|
配偶者と第2順位の法定相続人がいる場合 | 遺産の3分の1 ただし第2順位の相続人が複数いる場合は3分の1を均等に分割 |
第2順位の法定相続人のみの場合 | 遺産の全て ただし第2順位の相続人が複数いる場合は均等に分割 |
第3順位の法定相続分 | |
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配偶者と第3順位の法定相続人がいる場合 | 遺産の4分の1 ただし第3順位の相続人が複数いる場合は4分の1を均等に分割 |
第3順位の法定相続人のみの場合 | 遺産の全て ただし第3順位の相続人が複数いる場合は均等に分割 |
相続手続きの流れ
7日以内の手続
①死亡届の提出
被相続人が亡くなったら死亡届を提出します。
人が亡くなった場合、7日間以内に死亡届を役所に提出しなければなりません。
3か月以内の手続
①遺言書の有無の調査・検認手続き
遺言書が有るかどうか、被相続人が住んでいた家をよく探してみましょう。
もし遺言書が複数あった場合最新の日付が書かれているものが有効となり、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所にて「検認手続き」が必要です。
②相続人の調査
もし遺言書が見つからなかった場合や、遺言書に相続財産の行方が一部しか書かれていなかった場合、残った相続財産については遺産分割協議にて誰に分けるかを決めなければなりません。
その遺産分割協議には全ての相続人が参加しないとならないため、誰が相続人になるのかをしっかり戸籍謄本で確認し、調査して相続人を確定します。
きちんとした調査をしなければ遺産分割協議も無効になってしまうので注意が必要です。
③相続財産の調査
どのような相続財産があるのか財産の全容を明らかにすることが、相続手続きを行うにあたっては非常に大切です。
なぜなら相続財産が明確になっていなければ、間違った手続きを選択して多額の借金を相続してしまったり、遺産分割協議を何度もやり直すことになる等の危険性があるからです。
④相続放棄・限定承認を検討
相続財産の全容を明らかにしたら、単純に全財産を相続するか、それとも相続放棄や限定承認の手続きを行うかを判断する必要があります。
相続方法の選択肢は次の3つです。
単純承認・・・無条件で全財産、全負債を相続する。
限定承認・・・相続財産を超えた借金は負担しない。
相続放棄・・・相続人としての立場を放棄する。
相続開始を知ってから3ヶ月以内に、どの相続方法を選択するか判断する必要があります。
4か月以内の手続
①所得税の準確定申告
被相続人の所得税を申告します。これを準確定申告と言います。
亡くなった時点で申告するべき所得税がある場合は、4ヶ月以内に準確定申告を行わなければならないので注意が必要です。
※準確定申告は、亡くなった人が確定申告を行っていた方の場合に必要になる手続きです。
10か月以内の手続
①遺産分割協議の開始
遺産を分割します。遺言書が有る場合はその内容に従いますが、無い場合は遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議は相続人全員参加となるため、相続人調査を行ったあと必ず行うようにしましょう。
遺産分割協議は相続人全員が同意する内容であればどんな方法で行っても構わないとされています。万が一揉めてしまった場合は、専門家に介入してもらうことも検討しましょう。
無事に遺産分割協議がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成します。誰がどの財産をどれだけ相続したのか等、協議に参加していない第三者が見ても分かるようにすれば、後の手続きやトラブルの防止に繋がります。
②相続財産の名義変更
相続財産の名義変更などの手続きをしましょう。
財産が現金であれば分割するだけですが、不動産や預金口座の場合、解約や名義変更の手続きが必要です。その時にどういった内容で遺産分割協議が終了したのかを知るために、遺産分割協議書の提出を求められます。間違いのない遺産分割協議書を作っておきましょう。
★不動産を相続した場合に行われる相続登記をしないでいると、次の世代の相続が発生し当事者が増えてしまいます。そして当事者が増えればそれだけ手続きが複雑になり、売却も自由にできなくなります。なので、なるべく早めに行いましょう。
③相続税の申告
相続税の申告と納付をしましょう。
相続税はほとんどの方には発生しない税金です。
しかし、相続財産が多いと納めなければなりません。この申告期限が10ヶ月以内と決められています。相続税を納めなければならないのに申告をしないままでいると、「無申告加算税」と言う通常の税率よりも加算された税金が発生します。
また、相続税には控除がありますが、基礎控除以外の特例などによる減税により相続税が0円になる場合も相続税申告が必要になるため、注意しましょう。
まとめ
相続は、被相続人の方の死亡から始まります。相続手続きには、死亡届の提出、遺言書の検認、法定相続情報一覧図の取得申請、準確定申告、遺産分割協議、相続税の税務申告、相続財産の登記など非常に多くの手続きがあります。
予め相続手続きの内容と流れの全体像を知っておくことで、自分で対応するのか、専門家に依頼するのか、慌てず対応を進めていくことができます。また、相続放棄、準確定申告、相続税申告など期限のある手続きについては要チェックです。