預貯金・借金・債務の生前整理・手続きについて

資産整理は相続発生後の家族の負担を軽減するためにも、元気なうちに取り組んでおくべき重要なステップです。今回は、「預貯金・借金・債務」について、よくある疑問に答える形で、生前に何を準備すべきかを整理します。

カードの分割払いや光熱費・通信費・家賃などの未払金は、どうしたらいい?

未払金は、相続における**「債務(マイナスの財産)」**に該当します。
つまり、支払い義務は遺族に引き継がれます。

支払えるものは生前に支払っておくのがベスト

遺された家族の負担を減らすためには、できるだけ未払金を残さないことが重要です。
これは大きな金額でなくても同様で、家賃の滞納、水道・ガス・電気料金の未納、携帯電話料金の未払いなど、すべて債務として扱われます。

クレジットカードの未払いは特に注意

カードでの買い物は請求が遅れて届くため、亡くなった後に引き落としが発生することがあります。
とくにリボ払い(残高払い)などを利用していた場合は、月々の定額請求が継続して届くため注意が必要です。

情報の「見える化」と家族との共有が大切

未払金が発生しうる契約は、以下のような情報を記録し、資産目録に追記して家族と共有しておきましょう。

  • 契約先の会社名(電気・ガス・通信・家賃など)
  • 契約名義と契約内容(料金、支払い方法)
  • 引き落とし口座やカード情報
  • 最終支払い日・未払金の有無

このような情報が整理されていれば、家族が相続後の支払い手続きを円滑に行えるだけでなく、不明な請求に惑わされる心配もありません。


亡くなった人が連帯保証人であることを知らなかった場合、家族はどうなる?

相続では、プラスの財産(預金、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金、保証債務など)も自動的に相続対象となります。

「連帯保証人」であることを知らずに相続するとどうなるか

たとえば、亡くなった親が、誰かの借金の「連帯保証人」になっていたことを子どもが知らなかった場合でも、その債務は相続されます。
これは非常に理不尽なように思えますが、法的には「単純承認」とされる限り、避けられません。

相続放棄で回避できる

こうしたケースを防ぐために、民法では**「相続放棄」**という手続きを認めています。
相続放棄をすれば、預金や不動産などを受け取れない代わりに、連帯保証債務も引き継ぐことはありません。

ただし、相続放棄には以下の制限があります。

  • 相続があったことを知った日から 3カ月以内に家庭裁判所へ申述
  • 相続人が複数いる場合、1人だけが放棄しても他の相続人に債務が回る

相続放棄は「全員で」行うのが安全

たとえば、夫が連帯保証人で亡くなった場合、妻と子が放棄しても、兄弟姉妹など他の相続人に債務が引き継がれる可能性があります。
そのため、債務の可能性があるときは、相続人全員で放棄するのが望ましい対応です。

相続放棄後も受け取れるもの

相続放棄をしても、**死亡保険金や共済金などの「みなし相続財産」**は受け取れます。
また、相続人全員が放棄した場合、家庭裁判所が選任する「相続財産管理人」が債務整理を行い、残った財産は国に帰属することになります。

放棄の判断に迷う場合は専門家へ

相続放棄をするかどうか迷う理由として、

  • 財産内容が把握できない
  • 他の相続人の所在が不明
  • 相続発生を知ったのが遅かった

などのケースがある場合、家庭裁判所に「熟慮期間の延長」を申し立てることができます。
ただし、延長が認められるかは家庭裁判所の判断次第であり、債権者から異議を申し立てられる可能性もあるため、迷ったら弁護士などの専門家に早めに相談するのが最善です。


まとめ

資産整理というと、財産を「残す」ことに意識が向きがちですが、実は**「家族の負担を減らす」ことこそが最も重要な準備**です。

  • 未払金はできるだけ減らし、明細を整理して伝えておく
  • 連帯保証債務は放置すると家族にリスクが及ぶ
  • 相続放棄には期限があるため、判断は早めに
  • 判断に迷ったら、家庭裁判所や専門家に相談する

これらの準備は、“自分のため”ではなく、“遺される家族のため”の思いやりでもあります。
「いつかやろう」ではなく、「今すぐできること」から着手していきましょう。

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