葬儀のマナー

不祝儀袋の「御霊前」と「御仏前」はどう違うのですか?

宗派や地域によって違いもありますが、一般的には、故人が亡くなった日から四十九日以降には「御仏前」、それより前には「御霊前」となります。ですから、通夜、葬儀、告別式に持参する香典の表書きは「御霊前」、四十九日の忌明け以降は、「御仏前」になります。
仏教では人が死んでから7週間(四十九日)の間、新しい生へと生まれ変わるための準備をしているとされ、その間、現世と来世のどちらにも位置しない存在である「霊」は「御霊前」、そして四十九日後、最終審判が行われ、はじめて「御仏前」となります。亡くなってから、7日ごとに次の生まれ変わりのための審判が行われるとされ、故人が善い世界へ生まれ変わることを願って行われるのが、7日ごとの追善供養なのです。不祝儀袋は、繰り返さないという意味を持つ結び切りの水引のもので、文字は薄墨を用いて書きます。

香典を何人かの連名でだす場合はどうしたらいいのですか?

2~3人の場合は連名で書きます。この場合、右側が上位となりますから年齢や職場での地位を考えて記入します。それ以上の人数の場合は、「○○一同」「○○有志」といった表書きにし、全員の名前を書いた紙を香典袋の中に入れておきます。

年賀欠礼(喪中ハガキ)とはどういったものですか?

喪中で年賀状の交換を辞退する旨を伝える書状です。通常、相手が年賀状を準備する前、12月上旬頃に発送します。
また、喪中などで年賀状を出せなかった方、年賀状を頂いたけれども自分は相手の方に年賀状を出していなかった方は「寒中見舞い」をだしましょう。寒中見舞いは、一般的に二十四節気の「小寒」「大寒」に当たる「寒中」に届けます。具体的には1月8日以降から1月末日頃までに送るようにします。寒中見舞いとは寒さのために相手を気遣う便りです。

遠方のため、友人の葬儀に行くことができません。気持ちを示したいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?(弔電・供花・香典の送り方)

お葬式に行けない場合は香典(お金)や供花を送ることで弔意を伝えることができます。

香典について
(1)会葬者に託す 
 お葬式に出席する方に自分の香典を託します。併せて弔電を送れば、お悔やみの気持ちがより伝えられます。
(2)自分で郵送する
 香典を郵送(現金書留)で送ります。郵便局の窓口で香典を送りたいと伝えると、香典袋が入る現金書留専用の封筒(有料)を用意してもらえます。このとき、お悔やみとお葬式に行けないお詫びを手紙に書いて添えましょう。
(3)後日弔問に伺う際に持参する
 後日弔問に伺い、その際に香典を渡します。葬儀の後は慌ただしいので、葬儀が終わってから1週間から四十九日頃までが一般的とされています。先に弔電を送ってから弔問すると、より丁寧です。

供花について
供花を送ることで、弔意を表します。宗教宗派等の違いにより送った供花が飾れないという事態等を防ぐためにも葬儀を担当する葬儀社に依頼をした方が安心です。

喪中の方に「お中元」や「お歳暮」を贈ってもよいのでしょうか?

喪中はお祝い事を避けるべき時期ですが、お中元やお歳暮はお祝い事ではなく日頃の感謝を相手に伝えるためのものなので、贈ったり受け取ったりできます。

喪中はがきが届いて知人が亡くなったのを知りました。今からお香典を送ってもよいのでしょうか?

喪中はがきで亡くなったことを知った場合も、お香典やお花を送って構いません。 「お母様のご逝去を存じ上げず失礼いたしました」のように、喪中見舞いに一文を添えて送りましょう。

お葬式には黒いマスクを着けていくべきなのでしょうか?

感染リスクを避けるためにマスクの着用は必須ですが、黒色のマスクを着用する必要はありません。色は白色が最も一般的です。また、色だけではなく、無地のものや、模様やロゴなどは入っていないものが適切です。

通夜と葬儀・告別式はどう違うのでしょうか?

通夜
葬儀の形式が多様化している現在でも、最も一般的であるのは1日目に通夜、2日目に葬儀・告別式を行うというスタイルです。葬儀・告別式を終えた後は出棺して遺体を荼毘に付すことになりますから、通夜とはまず、遺族が故人と共に最後の晩を過ごす大切な時間として位置づけられます。
一方で、現在の通夜は「夕刻から夜間にかけて行われる弔問儀礼」として受けとめられている傾向も強く、仕事を終えてから参列できるということもあって弔問客が葬儀・告別式より多いケースも珍しくはありません。ただし通夜の本来の位置付けはあくまで、上記のように遺族が故人を見守って最後の時を分かち合うための大事な機会です。また、通夜の形式は地域によってかなり異なります。

葬儀・告別式
通夜の翌日に行われる「葬儀・告別式」とは、その言葉が表しているとおり、厳密に言うと葬儀式と告別式という2つの儀式が組み合わせられたものとして位置づけられます。
葬儀式は故人の死を悼み、他界へと送り出すための宗教儀礼と言えるでしょう。一方、告別式は不特定多数の会葬者が故人に別れを告げ、遺族に哀悼の意を捧げるための弔問儀礼であり、明治時代に活躍した思想家である中江兆民の死にあたって生み出された儀礼形式です。中江兆民は生前から無宗教的な考えを持っていたことで知られ、そのため自らの葬儀を行うことも拒んでいたと伝えられていますが、死後に友人たちが「一同で弔問する場だけでも設けたい」と願って編み出したのが告別式というスタイルでした。したがって本来は宗教的な趣旨を伴わないものだったのですが、葬儀式から告別式へという連続した流れで1つの儀礼とするやり方が徐々に広がり、葬儀・告別式として「セットで行う」ことが主流になって今日に至っています。

お悔やみの言葉はいつ、どのようにお伝えすればよいのでしょうか?(受付・ご遺族)

お悔やみの言葉は「このたびはご愁傷さまでございます」「お悔やみ申しあげます」などが代表的です。声のトーンは抑えて小さめの声で挨拶するのが基本です。
受付では基本的なお悔やみの言葉につづけて「お参りさせていただきます」や仏式なら「ご焼香をさせていただきます」といった言葉を添えます。
キリスト教の葬儀は「安らかなお眠りをお祈り申し上げます」が一般的です。死に対する考え方は宗教によって違いがあるので、参列する際に配慮しましょう。

お葬式の疑問

お経や戒名に対するお布施はどのようにお渡ししたらよいでしょうか?

白封筒に入れ、「御布施」と表書きし、お渡しします。お経と戒名のお布施は別々の場合もありますし、一緒に含めてお渡しする場合もあります。金額については、お寺との付き合いの度合いや寺院の格等によっても異なります。率直に住職にお尋ねしても失礼にはあたりませんので、尋ねてみましょう。「志でけっこうです」と言われた場合には、習わしを知っている方に教えていただくか、葬儀社でも大体の目安はお答えできると思います。 交通費が必要と思われる場合は「御車料」を、食事を出さない場合は「御膳料」を、相当する金額を別途に包むとよいでしょう。

喪主としての挨拶はどのようなことを言えばよいのでしょうか?

深い哀しみの中にあっても、会葬者へのお礼の気持ちを述べることが大切です。遺族代表の挨拶は、喪主かその代理の親族がします。聴いる会葬者も、遺族が哀しみをこらえて挨拶を述べることは辛いだろうと察していますから、簡単なもので十分です。長い時間お話をするよりも、手短に簡潔に述べた方が良いでしょう。
(例 文)
遺族を代表し、一言ご挨拶を申し上げます。
本日は、ご多忙のところ、遠路ご会葬いただき、厚く御礼を申し上げます。
生前、故人に寄せられた皆様のご厚情に対し、心より御礼申し上げます。
私どもは、未熟ではありますが、故人の教えを守り、精進していく所存です。
皆様方には、故人と同様お付き合いいただき、ご指導いただけますことをお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。
※上記はあくまで例文です。実際は故人との思い出等を織り交ぜながら話すことにより、会葬者には印象深いお葬式になることでしょう。

葬儀費用の平均を教えてください。

一般財団法人日本消費者協会が行った「第11回 葬儀についてのアンケート調査報告書」 によると、2017年時点で葬儀費用の全国平均は、約195万円でした。とはいえ、葬儀費用の相場は地域によっても差が見られます。地域ごとに分けてみると、東北や関東の一部、中部地方では全国平均より相場の費用が高い傾向がある一方、北海道や四国地方では平均より40万円ほど低くなっています。 

直葬とは一般的な葬儀とどう違うのでしょうか?

「直葬」とは、死亡後に遺体を火葬場まで直接搬送し、式場で葬儀を行うことなく、そのまま荼毘に付すことを指します。ただし、火葬炉の前で読経を行うなどの簡潔な儀礼が行われる場合が多いようです。最低限の費用と時間で葬儀を済ませたいと考える消費者に対応した形式と言えますが、直葬を「弔い」と考えてよいのか否かという点は、議論の分かれるところです。

お別れ会とは一般的な葬儀とどう違うのでしょうか?

「お別れ会」とは、特に決められた名称や形式はありませんが、告別式だけを切り離して行う葬儀と考えられます。宗教的な儀礼を伴わない場合が多く、故人とのお別れや、遺族の悲しみへの共感を中心とすることがひとつの特徴です。会葬者に一定の時間内で自由に来てもらい、祭壇に献花をした後、別室で軽食などを提供するという形式が近年では増えてきました。

家族葬について

「密葬」と「家族葬」はどう違うのですか?

葬儀が松の内にかかる場合や、故人が著名人や企業の役員などで後日公葬を行う場合には、「密葬」として身内だけで葬儀を済ませ火葬に付すことがあります。この場合、日を改めての「本葬」は遺骨をもって行うことになります。一方、「家族葬」とは、広範囲に人を呼ばないで、家族中心で葬儀を行うことを言います。したがって、後の本葬はありません。

「家族葬」の良い点、悪い点を教えて下さい。

「家族葬」の良い点は、ご遺族が故人とのお別れに集中できることではないでしょうか。通常のお葬式では多くの参列者が弔問・会葬に来るため、ご遺族は知らず知らずのうちに気を遣ってしまい、疲れてしまうことが多いようです。また、参列者の対応に追われて、ゆっくり故人とお別れができないということもあるようです。そんなご遺族の負担を軽減できるのが「家族葬」の利点かもしれません。
一方、悪い点をいくつか挙げてみましょう。最も大きいことは、亡くなったことを知った人が後日お悔やみを述べに自宅まで来てしまい、ご遺族がその対応に追われ、かえって疲れてしまうことでしょう。また、参列者を呼ばない予定でも、式の日程を知って参列に来てしまう人が出てきて、その予期せね対応に追われてしまうことがあります。後になって亡くなったことを知った人がどうして教えてくれなかったのか、故人と最期のお別れをしたかったのに、ととても残念がり、悔しい思いをされることもあるようです。
そもそも葬儀というのは、故人とご喪家が人生の最期を締め括る儀式です。友人・知人等の交友関係、会社等の職場関係、ご近所の方々とのお別れの場であり、お礼を述べる場でもあるはずです。そこをおざなりにしてしまうと人間関係を省略した形になってしまい、これまでの社会とのつながり、結びつきが崩れてしまうことになりかねません。
どういった葬儀にするかは、もちろんご遺族の判断によりますが、一度葬儀社にご相談することをお勧めいたします。

家族葬にすると費用は安くなりますか?

家族葬は、一般的な葬儀より参列者の人数が少ない場合が多いので、会場費等が抑えられます。ただし、参列者が減ることでお香典としていただく額も変化しますので、実際の喪家の費用負担に関しては一概には言えません。

「家族葬」と「一般的な葬儀」の会葬マナーに違いはあるのでしょうか?

会葬マナーに大きな違いはありません。
一般葬が「不特定多数の会葬者が来ること」を前提としているのに対し、家族葬とは故人の親しかった人びとに限定して行う葬儀を指します。近年では家族葬というと「小規模で低価格な葬儀」のことと考えられていますが、会葬者の人数などに厳密な定義はなく、文字通り家族だけで行うものから、親族や友人まで含めて一般葬と同様の規模で行うものまで、多様なスタイルが存在します。

家族葬にすると親戚や友人は呼べないのでしょうか?

家族葬の参列範囲に明確な決まりはないので、身内しか参列してはいけないということはありません。直系の家族以外にも故人の意思を尊重して、生前親しかった関係者を呼ぶこともあり、会葬者も数名~30名程度と幅があるようです。しかしながら、家族葬は会葬者を明確に決めておかないとトラブルにつながる恐れがあります。 また、訃報を家族や近親者だけではなく、親戚や近所に住む方に伝えると、それを葬儀の案内と勘違いして参列するケースもあります。誤解を与えないように家族葬を行う場合は必ず、家族や近親者でのみ葬儀を行うことをしっかりと伝える必要があります。

ご近所の方が亡くなり、家族葬を行ったと葬儀後にしばらく経ってから聞きました。気持ちを示したいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか?

香典を持ってお伺いしたい場合は、まずは喪家にその旨を伝え、ご遺族の意向を伺いましょう。受け入れてもらえる場合は、あまり負担をかけない形で対応するようにしましょう。まずは弔問の日時を決め、自宅に伺います。基本的に香典は直接手渡しするのがマナーです。

友人のお父様の葬儀を家族葬で行うと言われました。参列は控えるべきでしょうか?

家族葬だからと言って、参列者が全く入れないことはありません。お焼香のみ出来る場合も多くあります。しかしながら、喪家に「家族だけで最期の時間を過ごしたい」というお気持ちがあるかもしれませんので、ご友人にお聞きになってから参列されるのが良いでしょう。

同僚のお父様が亡くなり「家族葬」で執り行うと訃報連絡がありました。供花や弔電を出してもよいのでしょうか?

弔電については、「辞退」ということはありませんが、「供花やお香典」については、「辞退」されている場合もありますので、直接お聞きするか、担当する葬儀社にお聞きになるのが良いでしょう。

家族葬を執り行った後に友人から「お香典」をいただきました。お返しはどのようにしたらよいのでしょうか?

一般葬でも家族葬でも、香典返しのマナーは同じです。香典をいただいたら、香典の額の半分から3分の1の額で返礼品を用意し、四十九日を終えたあとの「忌明け」から2週間以内に送りましょう。記念品とならない食品や消耗品を選ぶのがポイントです。お礼状も忘れずに添えて、しっかりと感謝の気持ちを伝えることが大切です。お返しが不要だと言われたら、お礼状だけ早めに送りましょう。

葬儀後に知りたいこと

永代供養墓とはどういったものですか?

永代供養墓とは、お墓参りできない人に代わって、お寺が責任を持って永代にわたって供養と管理をしてもらえるお墓のことです。
他の方と同じ墓や同じ納骨堂に納骨されることから、合祀墓、合同墓、共同墓等とも言われています。近年の核家族化や小子化等の影響により、後継者の不在やお墓を守っていくという意識の希薄化等によって、最近増加傾向にあります。費用や供養の形態も含め充分確認する必要があります。

七仏事(中陰法要)について教えてください。

仏教における輪廻転生、つまり「全ての生命は生と死を繰り返す」という思想では、死んだ瞬間から次の生命に生まれ変わるまでは49日間であると考えられています。この49日間のことを中陰と呼び、7日ごとに法要(中陰法要)を営むものとされました。それが、前掲の初七日(7日目)をはじめとして、二七日(14日目)、三七日(21日目)、四七日(28日目)、五七日(35日目)、六七日(42日目)、七日(49日目)の7回にわたる七仏事です。
七仏事の最後にあたる七七日(または七七日の法要)のことを、「四十九日の全てが満了した」という意味で満中陰と呼ぶこともあります。また、この四十九日の間は「忌中」とされ、遺族は食事や外出などのさまざまな面で死の穢れを避け、慎ましい生活を送るものと考えられていました。そして満中陰になると「忌明け」となって日常生活に戻ることになりますが、現代のライフスタイルではなかなか難しいのも事実です。

年季法要について教えてください。

四十九日を過ぎた後は、亡くなった日から100日目に行われる百ヶ日、1年目の命日に行われる一周忌、そして2年目の命日に行われる三回忌という3つの法要を営みます。また、この3つを上記の七仏事に加えたものを十仏事と呼びます。一周忌は「亡くなってから春夏秋冬の季節が周りめぐって1年が過ぎた」といった意味で一周忌と呼びますが、三回忌は亡くなってから3年目ではなく、2年目となりますので注意してください。これは、死んだ年を1年目とする「数え年」で考えるためで、三回忌以降の区切りの年に行われる年忌法要も同様です。
三回忌の後は七回忌(6年目)、十三回忌(12年目)、三十三回忌(32年目)と続き、十仏事にこの3つを加えたものを十三仏事と呼びます。三十三回忌をもって「弔い上げ」、つまり生きている者の直接的な記憶から離れて「先祖」になったということで年忌法要も終えることが一般的ですが、一方では現在の家族形態では三十三回忌まで死者の記憶を受け継ぐことが少なくなっているという傾向もあります。 この他に十七回忌(16年目)、二十三回忌(22年目)、二十五回忌(24年目)、二十七回忌(26年目)を加え、五十回忌(49年目)をもって弔い上げとする場合もあります。